水中音響用語と解説
サイドスキャンソーナー編
サイドスキャンソーナーに関係する英語の用語(ABC順)の訳語とその解説を記述してあります。
absorption(吸収または吸音) --> ソーナービームが水中を伝搬する際に、エネルギーが小さくなっていくこと。
Acquisition(捕捉) --> 海底の目的物をソーナーを用いて探知し、認識するプロセス。
Active Sonar (アクティブソナー) -->プロジェクタ(送波器)とハイドロフォン(受波器)の両方で構成されるソナーシステム。音響信号の送受信が可能である。
Along-track (進路沿いに) --> トーフィッシュの進路と平行方向に(横向きに)。
Altitude(高度)--> トーフィッシュの海底からの高さ。一般にはフィートかメートルで計られる。
Ambient Noise(環境騒音)--> ソーナーシステムが感知する音響信号で、水中環境中の多様な発生源から発散する。
Anechoic(無響)--> 異常に反射音が小さいことが特徴的な物体または場所。無反響。
Angle Of Incidence(入射角)-->直線の音響パルスが何かの表面とぶつかるときに、その表面に対する垂線と作る角度。
Attenuation(減衰)-->ソーナー信号の振幅が弱力化または減少するプロセス。散乱、ビームの開き、吸音など多数の要因によって生じる。
Backscatter(後方散乱)-->散乱プロセスにおいて、音響放射が90°以上の角度で偏向すること。
Bathymetry(水深測量)-->大洋、海、その他の大水域の深さを、一般にはスワス幅の狭い音響システムを用いて測定すること。
Beam Angle(ビーム角)-->ソナービームの左右両側――ある点(トランスデューサー)を中心に分岐している――を一致させるのに必要な回転の量(角度)。ビーム角は伝搬中の発散速度を決定する。
Beam Forming(ビーム成形)-->トランスデューサー・アレイの幾何学的配置を調整することで音響ビームを形作るプロセス。
Beam Spreading(ビームの開き)-->角度とレンジの一次関数としてのソナービームの発散。
Beam Width(ビーム幅)--> ビームの発信源から一定の距離における、左右ビーム間の距離。
Blanking(ブランキング)-->水中の不連続性によって生じるソナー信号の遮断で、ソナー記録に空白のプリントされない部分が生じる。時々、まれにではあるが、制御/ディスプレー部分の外部の局所信号または放射によって生じることがある。
Boomer(ブーマー)-->一般には0.5〜2.5kHzのレンジで操作される震度計。海底に垂直に向けた円錐ビームを発信する。海底下の地質学的特徴を描くのに用いる。
Bottom Lock(ボトムロック)-->ソナーがトーフィッシュの真下の海底を連続して探知し、トーフィッシュの高さを計算するための方法。この計算は、サイドスキャンソナーの斜距離補正プロセスにとって重要。
Catanary(カテナリー)-->水中を移動する曳航ケーブルが作る曲線。一般にはケーブルに対する水の抵抗力によって誘発される。
Cavitation(キャビテーション)-->水中にベーパーポケットが急に形成してつぶれること。たいていは圧力が大幅に急降下することによって起こる。キャビテーションの泡の一部はすぐには再溶解しないため、ソナー信号消失の主な原因のひとつとなっている。
Channel(チャンネル)-->多信号ソナーシステムで使われる2〜3の信号の1つ。あるいは、ディスプレーまたはソナー記録上でこの信号からのデータが表示されている場所。
Compression(圧縮)-->速度や斜距離ひずみによって、ソナー画像の大きさが1つの軸方向に縮小すること。
Correction(補正)-->速度、斜距離、その他のソナーのひずみで生じた誤差を取り除くプロセス。
Coverage(探査範囲)-->サイドスキャンソナーの海底スワス幅と、探査船が進路上を航行した距離によって表される面積。また、ある面積の反復探査にも関係する。すなわち、1パスはあるエリアの100%探査範囲に等しく、2パスは200%探査範囲となる。
Cross-Track(航跡の交差)-->探査船またはトーフィッシュの進路に対し90度の方向
Deadweight Depressor(j自重デプレッサ)-->トーフィッシュの深度を増やすために、曳航ケーブルに取り付けて用いる、自力では動かない重い錘。
Decibel(デシベル)-->音波の強度を表す単位。音波によって生じる圧力と基準圧力の比を示す率常用対数の20倍に相当する。
Depressor (デプレッサ)-->ソナーの曳航ケーブルに取り付け、曳航体の深度を増やす補助に用いる付属装置。一般には自重と流体力学の2タイプがある。
Detectability(検出可能性)-->海底異常の大きさ、形状、組成。その海底異常の存在を識別するソナーの能力と関連してとらえたもの。
Differentiation(*差別化)-->同一の航法計器を別々に用いるプロセス。1台は既知の場所に固定し、無線リンクを通じてもう1台の移動計器にオフセット計算値を提供する。このプロセスは、日周期や大気の変化に影響される可能性のある特定の航法計器の精度を高めるために用いる。
Discontinuity(不連続)-->ある水域の構成における特定の変化をいい、その変化によって入射するソナーパルスの音響伝搬の速度や方向に変化が生じるもの。
抵抗(Drag):曳航体の構成要素に対してはたらく流体力学的な力。曳航体の前進運動を減じる傾向がある。
Event(イベント)-->ソナー記録に記入されるか、保存データに組み込まれたマークやメモ。探査中の航行位置決定やその他重要な出来事の起こった瞬間を表す。
First Bottom Return(第1海底反射波)-->サイドスキャンソナー記録の中で、トーフィッシュとその真下の海底との間の最短の音響経路を表す部分。
First Surface Return(第1水面反射波)-->サイドスキャンソナー記録の中で、トーフィッシュとその真上の水面との間の最短の音響経路を表す部分。
Fish Height(フィッシュ高度)-->トーフィッシュと海底の距離。ふつうはフィートかメートルで計られる。
Footprint(フットプリント)-->発信されるソナーパルスの音響レベルの増加によって、その期間中、または後から影響を受ける海底範囲。
Frequency(周波数)-->単位時間当たりの音波のサイクル数または完了交番数。たいていヘルツで測定される。従来のサイドスキャンソーナーで一般に用いられる周波数は、25〜450kHz。
Fully-corrected(完全補正)-->速度と斜距離を補正したソナー記録。海底を1:1の二次元画像で正確に描写する。
Gain(ゲイン)-->増幅器によって信号の振幅に生じた増加の尺度。増幅は、たいてい時間変動ゲインサーキットリーまたは印刷制御装置を通じて行われる。
GPS(Global Positioning System,全地球位置把握システム)-->衛星を通じた航法システムのひとつで、世界中で利用できる。サイドスキャンソナー探査で利用できる高い精度を提供する。
Grazing Angle(入射余角)-->サイドスキャンソナーのパルスが海底にあたり、海底を伝搬していく角度。
Heave(ヒーブ)-->水面上の船またはトーフィッシュが規則的な動きで上下すること。または、トーフィッシュの上下揺れによってソナー記録上に生じる、ばらばらでぎざぎざの粗い画像。
Horizontal Beam Width(水平ビーム幅)-->送信された(および、または受信された)ソナービームの進路沿い(横方向)次元における角度。サイドスキャンソナーでは0.5〜2.5度が多い。
Hydrodynamic Depressor(流体力学デプレッサ)-->水流が増したときに負の揚力を増すような向きにルーバーまたは翼板を取り付けた、曳航体デプレッサー。
Hydrophone(ハイドロフォン)-->水中音響信号(圧力波)を電気信号に変換することによって機能するソナー受信器。水中聴音器。
Hz(ヘルツ)-->毎秒1サイクルに相当する周波数の単位。物理学者H. R. Hertz(1857 - 1894)にちなんで名づけられた。
Insonify, 英:Ensonify(*音波到達)-->ある面積または海底の一部がソナーエネルギーに暴露すること。
Instability(不安定性)-->上下揺れ、縦揺れ、横揺れ、船首揺れの動きを受けたトーフィッシュの行動。または、曳航体のいずれかの部分の不規則な動き。たいていは抵抗力の変動から生じる
Interference(干渉)-->主要サイドスキャンソナーデータのディスプレーと矛盾する、音響または電気を原因とする誤信号表示。
Interferometric Sonar(干渉ソーナー)-->同一周波数の2〜3のソナー波が組み合わさり、相互を強化または相殺するプロセスを基にしたシステム。結果として生じる波の振幅は、組み合わさった並みの振幅合計に等しい。干渉角度を決定することができるため、こうしたソナーシステムはサイドスキャンデータと同時に、測深データも提供する。
In-water-cable(水中ケーブル)-->水柱に一部または全部露出した曳航ケーブルの長さ。抵抗力に影響されている可能性がある。
Kiting(*カイティング)-->長いケーブルにつながれ、深海に下りている曳航体に起きる、規則正しい側方運動。たいていはデプレッサーの流体力学が足りないために起こる。
Lane(レーン)-->コースまたは進路。探査中の探査船がその中央を航行する。レーンは、ある進路とその隣の進路間の距離の半分で線引きされる。
Lane Spacing(レーン間隔)-->多レーン探査における、連続する探査船の進路間の距離。
Lateral(側方)-->トーフィッシュ進路の横に、またはクロストラックの次元で。
Layback(レイバック)-->探査船、または航法アンテナと、トーフィッシュとの水平距離。
Loran(ロラン)-->100メートル単位の精度をもつ航法システム。海岸に固定した2本以上のアンテナから送られる信号の時間のずれに基づく。
Mapping(地形図作成)-->海底の大きな範囲を縦横1:1の平面図で正確に表すソナー記録を作り出すこと。または、複雑な水中標的の高解像度画像を作り出すこと。
Mensuration(求積)-->ソナー記録に示された物体の寸法と体積の計測。
Microbars(マイクロバール)-->1バールの100万分の1に相当する圧力の単位。音響信号の強度を示すのに一般に用いられる。
Mosaic(モザイク)-->海底の一定エリアを正確に連続して二次元表示する方法で、ソナー記録を符合させて組み立てた図。
Multipath(多重経路)-->単一の発信源から、ソナー信号が異なる経路を通じて標的またはトーフィッシュに到達すること。
Noise(雑音)-->ソナーによって探知される外からの信号で、興味の対象となっている信号をシステムが表示する効率やオペレーターが解釈する効率に影響するもの。
Out-of-range(レンジ外)-->システムのレンジ設定の範囲外にある強い反射体から送られ、ソナーによって表示される標的反響のこと。
Overlap(オーバーラップ)-->2回以上探査される海底範囲。スワス幅のパーセントで表される。
Over-the ground(対地速度)-->探査船またはトーフィッシュの速度の真値。風や水の動きとは関係なく、海底に対する速度として測定された値。
Pass(パス)-->ソナー探査中に、海底異常の近くを1回通過すること。
Passive Sonar(パッシブソーナー)-->ハイドロフォンを1個しか持たず、信号の受信のみで送信能力はないソナーシステム。
Path-tracking(進路追跡)-->曳航体が水面上の船によって曳航される進路を正確にたどる能力。
Ping(ピング)-->ソナーシステムの1つの発信パルス。または、単一の発信パルスからもどってきたパルスで、サイドスキャンデータに横1本の線として表示される。
Pitch(ピッチ,縦揺れ)-->トーフィッシュの不安定性のひとつで、船首と船尾が水平軸に対して交互に上下する動き。
Plan View(平面図)-->一定比例に縮尺されたサイドスキャンソナー表示で、海底の一部の上面を表すために作成される。
Post-processing(後処理)-->リアルタイムのデータ生成と記憶の後に行う、ソナーデータ処理。
Pre-plots(事前プロット)-->進路と航行位置決定ポイントを含む特定のポイント。ポイントの位置は探査開始前に決定される。
Profiler(プロファイラ)-->探査ラインに沿って海底の垂直断面または単純な輪郭を記録する計器。
Projector(送波器)-->電気信号を圧力波(音響信号)に変換し、水中に発信するソナートランスデューサー。
Propagate(伝搬)-->音波が水中を伝わる運動。または伝送。
Pulse(パルス):ソナーの短いバースト。一般に、時間、距離またはパワーの関数として測定される。
Pulse Length(パルス長)-->アクティブソナーが1つのパルスを送信する時間の長さ。一般にはミリセカンドで表される。
Pulse Width(パルス幅)-->ソナーのレンジ内で、ある時点において音波が当たっている水層の厚さ。メートルで表す。パルス長と水中の音速を乗じることによって求める。
Quench(消失効果)-->ソナー信号の損失。たいていは水中の不連続によって起こり、結果としてソナーディスプレーに空白部分が生じる。
Q-Route(Qルート)-->機雷の埋まった水路における安全な航行ルート。
Range(レンジ)-->距離を表すソナー設定。通常はメートルで計られる。ソナーが表示するトーフィッシュからの最大距離(ソナーにおけるレンジ設定は、ソナーパルスの発信時間間隔も決定する)。または、クロストラック次元と同義。
Range Resolution(距離分解能)-->トーフィッシュの進行方向に対し90°の線上に物体を、ソナーが別個のものとして明瞭に画像化する能力。
Range Compression(レンジデータ圧縮)-->サイドスキャンソナーディスプレーの斜距離の形状配置によって起こる、ソナー画像の圧縮。
Range Overlap(レンジのオーバーラップ)-->探査中に進路が連続することで音波が繰返し到達した、トーフィッシュの進路に対して横方向の海底エリア。または、スワス幅からレーン間隔を差し引いた値。通常はメートルで表される。
Ray Bending(音線の曲がり)-->水中におけるソナービームの速度および方向の変化。
Recognition(認識)-->ソナーオペレーターが、ソナーデータに表示された標的または異常の存在に気づくこと。
Refraction(屈折)-->ある媒体から波速の異なる別の媒体に斜めに通過する際の、音響ビームの方向の変化。
Reverberation(残響)-->1個または複数の標的からのソナー信号の反響。
Roll(横揺れ ロール)-->船または曳航体の、縦軸に対する規則正しい運動。
Rub-Test(摩擦試験)-->システムの電気連続性をテストするために、トランスデューサーの表面を手で擦って摩擦を起こすプロセス。
Sea Clutter(海面反射)-->荒れた海面からの音響反射によってソナーディスプレーに生じる画像。
Scale Marks(目盛線)-->ソナーディスプレー上の等距離の目盛。標的および異常の求積の補助や、トーフィッシュの毛色と標的のレンジのずれに関する情報提供に用いられる。
Scattering(散乱)-->ソナー信号が、屈折、回折、反射によって多方向に拡散すること。信号の当った場所の物質特性が主な原因となる。
Shadow(陰影)-->通常のソナー記録上の明るい部分で、周囲の場所よりも音波の当り方が少ない場所。たいていは、海底または海底上の音響の透過しにくい物体による信号遮断が原因となる。
Slant Range(斜距離)-->トーフィッシュ、その真下の海底、海底上の探査対象ポイントで形成される直角三角形の斜辺に沿って、ソナー信号が直線経路で到達する時間。
Slant Range Correction(斜距離補正)-->レンジデータ圧縮をキャンセルするために、ディスプレー上のソーナーデータをコンピュータによって正常な位置に修正すること。
Slip Ring(スリップリング)-->ウィンチなどによる巻き取り操作の間にソナーケーブルの電気連続性が十分に発揮できるようにするための、電気機械部品。たいていウィンチに利用される。
Sonar Geometry(ソナー幾何学)-->ソナーのトランスデューサーと、海底、標的、海面を含む周辺環境との、空間的関係。
Sonograph(音響画像)-->リアルタイムまたは記録データから生成された、ソナーデータのハードコピーを表示したもの。
Specular Reflector(鏡面反射体)-->さまざまな角度からの入射に対して強力な反射体となる物体。この物体の表面に対しては、入射ソナービームはたいてい直角を成す。この種の物体としては、パイプなどの円柱形の物体、直交に位置設定された板、球体などがある。
Speed Correction(速度補正)-->ソナーチャートの長さを探査船の対地速度と比例して調整すること。
Swath Width(スワス幅)-->サイドスキャンソナーの海底における横方向の探査範囲。
Termination(終端)-->曳航ケーブルのいずれかの端の接続部分。ここに単ピンまたは多ピンコネクターを接続する。
Thermocline(水温躍層)-->垂直の温度勾配がその層の上の水または下の水よりも大きい層。
Time Varied Gain(時間変動利得調整 TVG)-->増幅器のゲインを時間の経過によって変化させ、サイドスキャンソーナーの発信パルス間に戻ってくる信号のレベルが一定になるようにするプロセス。
Tow Fish(トーフィッシュ 曳航体)-->曳航式のソーナーを搭載するビークルのこと。通常のサイドスキャンソーナーは,海底から数十m〜100mくらいの高度を保って曳航する。
Transducer(トランスデューサ)-->ソーナーシステムの電気機械構成要素で、水中に取り付けられた電気エネルギーを音響エネルギーに(およびその逆に)変換する。
Transverse Resolution(横分解能)-->トーフィッシュの進路と平行線上にある物体を、ソーナーが別個のものとして明瞭に明瞭に画像化する能力。
Trigger Pulse(トリガパルス)-->発信パルスを開始するためにソナートランスデューサーの信号送信回路に送られる信号。または、ソーナー記録の中央にある2本の平行線で、ソーナー画像に関するフィッシュの位置を示す。
Vertical Beam Width(垂直ビーム幅)-->送信(または受信)されたサイドスキャンソーナーパルスの、垂直次元における角度。一般に40度から70度の間。
Water Column(ウオーターカラム)-->水面から水底までの垂直部分の水。この部分をソーナーが曳航されると考えられる。または、無補正ソナー記録の中央部分。
Wavelength(波長)-->1つの波における連続する2点間--振動の同じ位相に等しい--の距離を、伝搬方向に測ったもの。
Yaw(ヨウ)-->不安定性の1つで、船または曳航体が、垂直軸を中心に側面から側面へとふれる動きを特徴とする。
Z - Kinking (Zキンク)-->芯線と外被との間の見かけの運動によって生じるケーブル導線の破損(破損部分の「Z」形が特徴)。水中ケーブル終端で生じるときは、導線が圧力を受けて軟質外被から突き出し(ピストニング)、コネクター胴体の空き端に入る場合がある。
<*は訳者の便宜上つけた訳です。実際に利用されている訳語があるかと思いますので、ご確認下さい。>